図書館リニューアルに向けて〜飯能市立図書館に学ぶ

外観2

来年度にはいよいよ基本設計となる予定の守山市立図書館。その参考とするために公共施設調査特別委員会で、昨年リニューアルしたばかりの埼玉県飯能市立図書館を訪ねて来ました。
昨年は話題の武雄図書館も見て来ましたが、正直あそこまで先鋭的なものが守山市にそぐうのかという疑問も抱いたところ。飯能市は守山と人口もほぼ同じ。身の丈にあった図書館づくりの参考にしたいと思います。

以下報告です。

●  飯能市の概要・特性

・  江戸時代から「西川材」で知られた杉・檜の産地として木材と織物で繁栄。現在は東京都心から50k圏内に位置する近郊住宅都市に変貌。平成17年には旧名栗村と合併。193㎢の広大な面積を持つ市となる。2005年に「森林文化都市」を宣言。

・  人口は現在約81000人弱。平成17年の合併の際には84000人であったが減り続けている。

・  人口減少抑制策として「子育てをするなら飯能市で」を掲げ、子育て支援事業にも取り組む。2013年に総合保育施設「子育て支援センター」が完成。

◇飯能市立図書館 基本データ

外観

【施設概要】
敷地面積:6,291㎡ 延べ床面積:2,712㎡駐車場:78台
収蔵能力:約30万冊(うち書庫20万冊)
公募型プロポーザル

 【建設費】
土地購入貹 767,930,854 円
建物設計業務委託料 39,900,000 円
建築工事貹 576,450,000 円
機械設備工事貹 168,000,000 円
電気設備工事貹 113,589,000 円
家具工事 105,572,544 円
その他 181,067,744 円
合計 1,952,510,142 円

◇基本理念
「市民に愛され、市民と共に創り続ける図書館」として飯能市の特色をアピール

【1】木を用いた図書館

内観

西川材の柱とはいはいコーナー

地元の西川材を主要部分に使用。特徴的な丸太の柱は26本。まだ乾燥を続けていて、時々ピシッと音がする。裂け目も目に付くが全く問題ないということである。隣に先に述べた子育て支援センターがあるため幼児連れも利用も多い。「はいはいコーナー」や児童書架にも西川材が使われており、子どもの頃から地元の伝統である西川材に親しめるようになっている。

 

【2】利用者にとって快適な図書館

本を借りるだけでなく、館内で快適に読書・調査研究ができる滞在型図書館として、居心地のよい利用空間を創出。1階の各閲覧コーナーには様々なタイプの読書コーナー・座席を設置。また2階には自由に使える学習席や飲食OKの休憩スペースもあり。特徴的なのが申込制の社会人専用室(学習席6、読書席7)。一日3交代制で、クローズな空間で集中して、ゆったりと過ごすことができると好評である。

閲覧

多様な読書スペース

学習スペース

自由に使える学習スペース


【3】自然環境に優しい図書館

太陽光発電やLED照明の採用

◆運営の特徴

・広域連携
近隣の日高市、所沢市、狭山市、入間市、そして今年の10月からは東京都青梅市とも広域貸し出しを実施。

ボランティア

・ボランティアとの協働専用のボランティア室を設置し、現在40名のボランティアが3つのグループにわかれ、映画会やお話会の開催、返却本の配架、草むしりなどに取り組んでいる。研修や月1の集会での意見交換などもあり、ボランティアの様子はホームページにも随時アップされている。



ボランティア2

ボランティアは黄色のベストを着用。正規職員は青、臨時職員は緑とベストと色分けされている。それぞれで業務内容が違うため、来館者に「◎色のものにお尋ね下さい」と案内する時に有用であるとのことである。

・市直営施設としてのサービスの向上をはかるために図書館の評価指標を定めた。単なる数値目標でなく、「努力していることの評価」も盛り込む。「職員研修受講」の項目では、目標数値以上のポイントを獲得する努力をすることで職員のレベルアップを目指す。

◇サービスの特徴

・特色ある資料収集
「課題解決型図書館」をめざしてのレファレンス機能の充実。持ち帰りできるチラシ、パンフレット類の充実。また地元の「文化新聞」バックナンバーをデジタル可して閲覧できるシステムも。キーワード検索もできるのがポイント。

のちのICTの項でも触れるオンラインデータベースもその一環である。

・自動除菌機除菌ボックス
希望する市民が自分で操作。滋賀県内では草津市が先日導入して話題になったものであるが、実際には本の表面のみの除菌に過ぎず効果には疑問が残る。また昨今の除菌ブームに対しても賛否両論あり、そもそも様々な人が触ることが前提の図書館の本に対してそこまで求めることにも違和感はある。

 ◇ICT化
開館に合わせてクラウド型図書システム(富士通WebiLis)を導入。付随して以下の機能を導入。

1・読書推進活動システム
本に対するコメントなどの情報蓄積や「マイ本棚」機能

2・子ども読書推進ナビゲーション
遊びながら本を検索する「本ナビきっず」システム

3・スマホ向け情報検索システム「カーリルタッチ」
本棚等に設置したICタグをスマホで読み取り、所蔵資料の情報を得られるシステム。全国で初の導入。現在月200タッチ程度の利用ということである。これが多いのか少ないのか。iPhonは不可ということで、汎用性に疑問は残る。

 クラウド型はサーバーが館内に無いので、トラブルの際などの職員負担が減り、その点が大変よかったということである。

その他にも様々なデジタル機能を取り入れている。

・自動貸出機(ICタグ)
新しい書籍には最初からバーコードがついているが、古いものにはICタグを取り付ける必要があり、タグが1つ100円かかるため予算的にはかなり大変であったとのこと。

・館内用タブレット(4台)の貸し出しタブレット
セキュリティは、通販サイトなどにつながらない程度のフィルタリングはかけているとのこと。

・デジタルサイネージ(電光掲示板)

・音楽配信サービスNAXOSミュージックライブラリー
専用IDとパスワードで、クラッシックやジャズを中心に14日間自宅で音楽を好きなだけ聴けるというもの。5人まで同時アクセス可能。これまでにアクセスがバッティングしたことは無し。

・オンラインデータベース
新聞、辞典、法律など様々なデータベースを契約して提供している。個人でデータベースを作ることも可能だが、これまでの利用実績はない。

上記音楽配信などともに、導入の際には費用対効果や、行政がどこまでやるべきかという議論も必要であろう。

◇移動図書館
守山市の4倍以上広い飯能市は中山間部も多く、移動図書館が運営されている。専任職員と運転手を2名臨時職員として雇用。月、水、木、金運営、全22コースあり、各地月2〜3回回って来ることになる。この他にも、2カ所の分室がある。また、検索機能などの連携はないが、各公民館(地区行政センター)に図書コーナーもある。

◇子ども図書館
1997年にオープンした全国的にも珍しい子ども専用の図書館。絵本、児童書中心に6万冊収蔵。富士見分室と合わせて市内中心部に3つの図書館が存在することになり、新図書館の運営計画にもその役割分担が盛り込まれている。新図書館建設の際には存続も検討されたそうだが、人口減少抑制策として子育て支援に力を入れるということで残すことになったのではと推察される。

 所感—————————————-

内観2

まず、ガラス張りで光の入る明るい、木を多用した空間の居心地の良さが印象的であった。西川材の大きな柱はこの図書館の象徴と言えるものであり、子ども達の心にも地域の誇りとして自然に植え付けられるのではないだろうか。残念なが守山に森は無いが、滋賀県でも県内産材を使用する試みがはじまっており、補助金制度もある。技術も進歩し、強度や断熱性も担保されて来ている。守山でも新図書館建設の材料として、検討するに値すると考える。

扇風機

ただ、ガラス張りという点に関しては、様々な対策を施してもやはり熱がこもるという問題が出ているそうで、2階のおしゃれな電子掲示板の下には扇風機が置かれていた。前日訪れた福生市庁舎でも同様の問題が指摘されており、デザイン選考に当たっては、ぜひ留意していくべき課題であろう。

自由に使える学習スペースと、申込制の社会人学習室が分けられているのは

読書室

申込制の読書室

大変いい試みである思った。静かなところと賑やかなところもゾーンで分かれており、多様な人が集う図書館として、それぞれのニーズにあわせて様々な機能を持たせている点も参考にしたい。ただここで、ひとつ注意しておきたい点がある。現在図書館という箱に求められる機能は大変多岐に渡って来ており、言い出せばきりがない。滋賀県は図書館利用率全国一位である反面、書店が少ないという現状もあり、行政としてどこまで対応するのかということも、きちんと整理して決めておくべきであろう。例えば、先に述べた音楽配信サービスやデジタルデータベースなどは、行政サービスとしての必要性は薄いように思える。

コンセント

学習スペースのコンセントと消しゴムカス入れ

学習スペースの各テーブルにコンセントが設置されていることもありがたいと思ったが、手作りの消しゴムカス入れが置いてあったことがより印象的であった。他にも、手作りの本のポップや、毎日変わるおススメコーナーなど、職員さん、ボランティアさんが利用者目線で楽しみながら図書館運営に携わっておられる様子が感じ取れ、図書館に一番必要なのはマンパワーであると改めて感じた。守山図書館の司書さんや職員さんの評価は高いと聞く。新しい建物の計画と同時に、そのマンパワーがよりパワーアップできる人材育成策も講じるべきであろう。